ケニアの仲間たち~サイザルバスケットの職人1

カリオコマーケットの取引先、ジョセフが紹介してくれたのがジュリアナです。カリオコはハンディクラフトのマーケット。観光客ではなく業者向けのマーケットで、ナイロビ滞在中はとにかく通う場所です。

その頃のジュリアナは火曜のマサイマーケットに出店していて、そこで出会いました。

またも50個程度のオーダーからスタート。ジュリアナとはそれ以来15年以上の付き合いですが、バスケットを作ってなかったことはありません。ナイロビへの納品にはおしゃれしてきてくれています。

糸だけを作っているお母さんに比較的細めの糸を頼んでいるため、ジュリアナグループのバスケットはハンドルが細く、とても軽いバスケットが仕上がります。ハンドルが細いと荷物を入れた時に痛いのですが、彼女たちは細いハンドルが美しいというプライドを持っています。日本でも「ジュリアナのバスケットはどれですか?」という問い合わせがくるほどファンがいます。

ジュリアナの職人さんたちは、細かい模様を作るのも上手です。最初はサンプルメーカーと呼ばれる柄の達人が柄を編んで見せて、その人の編みを真似て仕上げます。難しい柄にも挑戦してくれるジュリアナはいつでも頼りになります。

納品率が悪い時の理由はいつも同じで、雨が多くて、畑がいそがしい年はバスケットの生産は落ちます。それはどの生産者にも共通です。

工房はもたず、染めの工程だけ集まってやって、それぞれが家で編みます。出来上がったものは納品日にジュリアナが経営するキオスク(なんでも売ってる小売店)に持参。または、ジュリアナがバイクでバスケットをピックアップにまわります。

納品の日は、夜明け前に村を出て、ナイロビのアパートへ朝早く持ってきてくれます。朝の約束に毎回きちんと来てくれるというのは、実はすばらしく、なかなかできないことだったりします。

そんなジュリアナも、赤土の土地に住んでいるので、携帯がだめになるのが早く、だいたい携帯の調子が良くありません。

一度どうしても連絡をとりたくて毎日電話をしましたが、いっこうにつながりません。困った末に息子さんに家を訪ねてもらい、ジュリアナにかわってもらい「あなたの携帯壊れてて一回もつながらない!新しい携帯買って」と伝えると、その日のうちに「新しい携帯からの初めての電話よ」と電話をくれました。

日本でどうにもこうにも連絡がとれないなどあまりないので、根気が必要です。でも数日かかっても連絡がつながるとほっとします。

この「応えてもらいたい」ことが、離れた場所から仕事をするのに大変なところです。毎日身近なことで追われて生活していると、日本からの呼びかけは面倒になってしまうこともあるでしょう。実際、こちらが取引したくても自然消滅してしまう生産者もあります。

 

ジュリアナの職人たちにも会いにいきました。マチャコス地方は道の脇にずっとサイザルが植わっていて、サイザルが育つ土地です。近くの街では週に一度サイザルのマーケットがあります。

マチャコスからマクターノレマについたら、教えてとマタツ(乗合バン。バスより小さい日本車のバンが庶民の公共機関となっている)を降りると、道の脇には数件のキオスクの他はブッシュと赤土の大地と、見えるところまで同じ風景がつづいていました。

マタツのステージ(バス停)からもかなり内陸にはいるジュリアナのうちは、知らない人ではたどり着けない場所です。アップダウンのつづく歩きだったのですが、私の歩きの遅さにあきれられました。

私はスポーツも全くしてきておらず、日本の生活でも歩く生活でないので、体力がなく、いきなり涼しいナイロビから数時間離れただけで灼熱の大地を歩くだけでヘトヘトでした。

そんな中職人たちは、サイザルを編みながら、たんたんと歩きながらジュリアナのうちに集まり、同じ村だけではなく、さらっと、20キロくらいかしら?4時間歩いてきたお母さんたちの強さを目の当たりにしました。ケニアの大地に生きる女はみんな強いなあと。

村にすむお母さんたちは、半農半サイザル業。自分たちで食べる畑をしつつ、鶏の世話をして、ヤギを飼い、水汲みのためのロバがいて、牛を飼っています。もちろんこどもを育て、ごはんをつくり、水を汲み、毎日朝から夜までよく働きます。

日本のうちには、動物がなにもいないというと「田舎のご両親にも牛は預けていないの?」と驚かれます。「誰も飼い方がわからないなら教えてあげるわよ。ニワトリは簡単よ。増やすのも他の動物より早いから」と。ニワトリをしめたこともないというと、それまたびっくりされました。日本の生活って便利だけれど場所がかわれば、本当に私って役に立たないな。人間力、生きていく力が足りてないなと。

家畜の中でも牛はなによりも大切です。牛は財産です。このエリアの牛にはコブがあり、牛を解体したときには、長老にコブの部分を食べてもらうそう。

「いつかシホにコブをたべさせてあげたい」と言ってくれますが、そんな大切な牛をいただけません。それよりも大事にしている牛が元気だと嬉しいです 

 

 


ケニアの仲間たち